野上日記

2014年7月

夏の盛に・・・

こんにちは、Y館長です。
 
教育に関わる者にとって、というより次代に責任を負う立場のすべての者にとって座視できない出来事が報じられ、その混沌・凄惨たる闇の向こうに一体何が潜み牙を向いているのか・・・・
 
胸が痛むだけでは済まない「何か」を突きつけられているように思います。
 
それでもここ野上には、変わらぬ真夏の新しい息吹がそこかしこに見つけられます。
 
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昨日、生け垣の蔓に見つけた「あおむし」・・・今年もしっかり登場してくれました。
 
こちらは、その「あおむし」くんの今朝の様子・・・
 
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とにかくその食欲には舌を巻かざるを得ません!
 
一体、何の幼虫かとネットを巡ってみると、どうやらオオスカシバというクチナシを食生とするスズメガの一種であるらしい・・・
 
あおむしの尾に一本の角があるのは蝶々ではなく蛾であることも知りました。
 
成虫は、その名の通り羽が透明な昼行性のちょっと変わった蛾であるらしい・・・
 
 
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同じ庭で今年生まれた新しい命の印、印、印・・・・
 
一匹も庭にはとどまってくれず、何処の木立で鳴いているのかな・・・
 
蝉の一生は儚さの極・・・・
 
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声  ―芭蕉―
 
 
そうそう、「人」の意を固有名詞から普通名詞に置き換えてみれば何やら現代(いま)の世相を思わせるこんな歌もありました・・・
 
蝉の声聞けばかなしな夏衣 うすくや人のならむと思へば ―紀友則―
 
 
この「夏」がこれからも永遠に巡り来る「夏」の変わらぬ一景色でありますよう・・・
 
ところで、仁川学院藤飯治平記念館は、「お知らせ」でもご案内のとおり8月10日(日)から8月17日(日)まで、夏季休館日とさせていただきます。
 
 
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仲をとりもつ・・・

こんにちは、Y館長です。
 
梅雨も開けた野上では、いよいよ迎える夏本番の気配がいっそ濃くなり、学院では明日からすべての学校で夏休みに入ります。
 
 

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この本は南紀を代表する民謡「串本節」にまつわる様々な資料を後世に伝えるべく地元の公民館が編纂した、想いあふれる一冊です。
表紙に「祝成人」とあるように串本町では成人式の引出物として配られているらしい・・・・
 
奥付をみても定価の表記がないので、非売品であるらしい・・・
平成元年七月発行、平成十一年七月増刷とある・・・
 
何故、そんな一冊がこの仁川学院藤飯治平記念館に? そう、この日記をご愛読(?)いただいている勘の良い皆さんはもうおわかりですよね!
 
先週、はるばる串本からご来館くださったY・Sさん・・・藤飯治平先生の奥さんである月美さんを「いちばん好き」と慕っておられたことは、いつぞやのブログでご紹介させていただきました。
 
息子さんご夫婦とともに訪ねてくれたY・Sさんは、数十年前、夏休みのたびにちいさな姉妹だけで、串本から列車を乗り継いで訪ねてきたこの想い出の「お家(うち)」が記念館として残っていることをホントに喜んでくださいました。
 
その際にお土産としてくださったのがこれだったのです。
 
そう、勘の良い皆さんは、えっ、それだけ? 何かエピソードがあるんでしょ? とご推察のとおり、もちろん、ただ串本の民謡が紹介されている本だから、というだけではありません・・・
 
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この本には、串本節にまつわる代表的なお土産品も紹介されていて、このページでは「人形」と「のれん」「手ぬぐい」が紹介されています。
 
地元で化粧品店を営む「すずや」さんが手作りをしているのだとか・・・そしてその「すずや」のご主人が月美さんの従姉妹で、「すずや」の娘さんがY・Sさんというわけ。Y・Sさんは一旦は地元を離れたのですが、いまは帰ってこられてそのお店を継いでおられるご様子・・・
 
そしてお話は人形からそのとなりの「のれん」「手ぬぐい」へ・・・
 
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なになに?・・のれん、手ぬぐいは、親戚の画家で兵庫教育大助教授の藤飯治平さん(宝塚市在住)がデザインしたもので、手軽な土産物として観光客に人気がある・・・・
 
Y・Sさんは、その実物も記念館にお持ち下さいました。藤飯治平デザインの串本みやげの定番!
 
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お聞きしたところこの「のれん」はお店に残る最後の一枚なのだとか・・・串本潮岬も観光の様相が変わって、サーフィンやダイビングといった体験を求めて訪れるひとが多く、こういう「みやげもの」は売れなくなりましたと寂しそうに話してくれました・・・
 
Yの若い頃、土産物の定番といえばこけし人形にペナントが真っ先に思い浮かぶのですが、この「のれん」は実用としてののれんではなく、云わばそのペナントの如きもの・・・どこに云ってもご当地キティーちゃんは溢れていますが、ほんとうのその土地のサムシングを伝えてくれるお土産品はもう望むべくもないのでしょうか・・・
 
 
そのとき見ていただいたものにこんなものも・・・
 
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ちいさかったY・Sさんんが、憧れた月美おばさんの麗姿・・・
 
そんな麗しいお嬢さんに一目惚れ(かどうかは聞いてませんが?!)した藤飯治平先生が旅先の阿蘇の宿から送った・・・恋文?
 
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というわけで、Y・Sさん、ありがとうございました。その後はお子さんたちとの水入らずの旅を愉しまれたことと思います。
 
次回は、ぜひご姉妹の皆さんもご一緒にお越しください。こころからお待ちしています。
 
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ファーストアニバーサリー・・・2014夏

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こんにちは、Y館長です。
 
7月8日 仁川学院藤飯治平記念館は開館一周年を迎えさせていただきました。
 
ここはまず型どおりに、この小さな小さなミュージアムを励まし支えてくださった皆さんに、こころから感謝申し上げます。
 
藤飯治平先生と仁川学院のご縁や開館に至る経緯はこれまでもこのブログでご紹介させていただいたとおりですが、なんということのない一年間のようで、それでも日々時々に新たな出会いや思いもかけない展開があったりしつつ、Y、Aともども堂守冥利に尽きる一年であったように思います。
 
いまはこの日を迎えた幸せを噛み締めながら、それでもここはひとつのマイルストーン、つぎの里程標を探す旅を続けなければと感慨を新たにしています・・・
これからの仁川学院藤飯治平記念館にどうかご期待ください。
 
この館長ブログ「野上日記」もなんとかへこたれずに続けてこれたのですが(まぁ、中身のことはこのさい置いといて・・・)、記念すべき!?第一回の話題は記念館庭で見つけた蝉の抜け殻のお話でした。
 
その際に、これから数年はこの蝉たちにとって「野上四丁目の悲劇」(ブラジル・ミネイロンの悲劇には及びもつかないか)ともいうべき光景が繰り返されるのではと書かせていただいたのですが・・・
 
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今年も、庭のくちなしの葉にしがみついた抜け殻と、駐車場の溝にうずくまる抜け殻を見つけました。
 
庭の地面にも既に五、六個の穴がありました。
 
まだ、蝉の鳴き声は聞かれませんが、これからのひと夏、庭から巣立つ蝉たちに大いなる声援を!
 
このように庭もすっかり夏模様、冒頭の写真はフェンス脇のフーセンカズラ、可憐な小さな花を経て、透き通るグリーンのほっぺを大きくふくらませ、風にそよいでいます・・・
 
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アニバーサリーだからと云う訳でもないのですが、以前にも創ったスケッチブックのミニチュア版の新バージョンを制作してみました。
 
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もう一冊はこちら・・・
 
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興味を持っていただければ、ぜひ「二年目の藤飯治平記念館」で手にとってご覧ください!
 
 
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朝がほや一輪深き淵の色 蕪村
 
そうそう、蕪村にはこんな句もありましたね・・・
 
祇園会や真葛ヶ原の風かほる
 
 
来週はもう祇園祭のクライマックス、Yの住む大阪西天満でも天神祭の雰囲気が徐々に高まりつつあります。
 
高校では夏の甲子園県大会も始まりました。仁川学院高等学校は、今日12日が今大会の初戦、対戦相手は明石高、高砂球場で12時30分のプレーボールとか・・・どうかご声援を。
 
 
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蛇のように・・・鳩のように・・・

こんにちは、Y館長です。
 
昨日は、ここ野上でも久方ぶりの梅雨らしい雨が、庭の緑を深くつややかにしてくれました。
 
それでも北九州方面では、そんなやさしい雨ではなく大雨となって難渋するところが多かったのだとか・・・・
 
何事もデジタル風に、1か0か、シロかクロか、オンかオフか、猛暑か冷夏か、日照りか大雨か・・・
 
そんな二極化がますます極まって、古来から紡がれ続けてきた多様な情緒を表現する日本語が死語になる、そんな危惧もあながち大袈裟とは言えなくなっているのかも・・・・
 
と、そんな思いが杞憂に終わればいいのですが。
 
 
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仁川学院の南からの通学路にある大スロープから望むことができるモニュメント・・・
 
創立50周年記念学院施設整備事業に際して、日々、子どもたちを励まし勇気づけるために制作されました。
 
作者は、前回のブログで触れた佐賀在住のアーティスト 塚本猪一郎さん。
 
「マタイによる福音書」で語られる、イエス様が迫害の後、御身のもとから十二人の使徒を福音を説くためイスラエルに遣わされるにあたって授けた説教から、『「わたしはあなたがたを遣わす。それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ。だから、蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい。(マタイ10-16)』のたとえをテーマに制作していただきました。
 
塚本先生は、比喩で表されたその聖書の語句の単純さからは伺えない深いイエス様の愛と哀しみを、ユーモラスとも思える塚本流の「愛」で表現してくださいました。
 
ちなみに、この有名な説教が行われた場所は、ガリラヤ湖の北方、ピリポ・カイザリヤの丘陵であったろうと、遠藤周作はその著「イエスの生涯」に書いています。
 
 
実は、このモニュメント、設置したところが、肝腎の大スロープからは、その大きな壁が邪魔をして、通学途中の子どもたち、とくに小学生には見えないことが判明! あちゃ~・・・
 
折角の作品がこれではと、思いついたのが・・・
 
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そう、出来上がった壁(厚さは優に20センチは超えています!)を左右とも切り欠いて、ガラスを嵌め込むという無謀なもの!
 
「ほな、ここ、切ってもらいましょか」と軽く言うYの言葉に、さすが天下のS建設・・・まったくたじろぎもせずに「わかりました」・・・
 
いやぁ、いまとなっては創立50周年記念学院施設整備事業に関わる嬉しいエピソードのひとつとなりました。
 
その塚本先生には、この大きな(全高2メートルを超えています)モニュメント以外にも、小学校の各クラスの入口脇に、それぞれのクラス・マークとも云える作品を配してくださいました。こちらは、また別の機会にご紹介をさせていただきましょう。
 
ギャラリー プチフォルムでの「塚本猪一郎展2014」は7月12日(土)まで開催されています。
 
塚本先生は、同じくギャラリー プチフォルムをホームグラウンドとされていた藤飯治平先生とも、当然ご面識はあったそうで、具象と抽象と立場こそ違え、お互い芸術家として交歓し切磋琢磨する、そんなご関係であったでしょうか・・・
 
 
気がつけばカレンダーも折り返して、はや七月、仁川学院藤飯治平記念館も間もなく一周年を迎えさせていただきます。
 
この一年の歩みを、天国の藤飯治平先生は喜んでくれているのかそれとも呆れはてていることか、なんとも覚束ないことではありますが、二年目に向けて出来ることを着実にやっていきたいと考えています・・・
 
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